夫と離婚したはいいものの、養育費が全く支払われない…。
このようなケースに遭遇してしまうと、どうしたらいいか分からないという人も多いでしょう。
基本的に相手が養育費を支払ってくれない場合は、相手の給料や預金を差し押さえすることができます。ですが、差し押さえをするには条件があること、また場合によっては差し押さえが難しいケースもあるので冷静に判断した上で実行するのがおすすめです。
今回の記事では、養育費の差し押さえの条件や手続方法などについて詳しく解説していきますね。
実は、養育費の差し押さえには「強制執行可能なケース」と「強制執行が不可能なケース」の2種類があります。これから、差し押さえを行いたいと考えている人はまず下記を参考に判断するといいでしょう。
強制執行が可能なケースは、以下の通りです。
* 養育費に関する裁判所の判決書を持っている場合
* 養育費の支払いについて書かれた書類(調停証書など)がある場合
* 強制執行を認める旨が記載された公正証書が手元にある場合
基本的には、裁判所で発行され、養育費に関することが記載された書類(公正証書等)を持っている場合は、強制で行えるというわけです。
一方、強制執行が不可能なケースは以下の通りです。
* 書面なしで口約束で合意をした場合
* 養育費について詳しい条件を定めていない場合
* 公正証書以外で、養育費の支払いなどを決めてしまった場合
基本的に、書面なし・口約束の場合は強制執行はかなり難しいです。また、判決書や調停証書以外の書類で養育費の支払いを決めてしまった場合も、強制執行を行うのは不可能なので注意が必要です。
ここまでは、養育費の差し押さえが可能か不可能かについて解説していきました。もし、差し押さえが可能なケースであったとしても油断は禁物です。養育費の差し押さえ時には、厳格な条件が定められています。これらの条件をクリアしないと、差し押さえの手続きに進むことはできないので注意が必要です。
まず、相手方に支払い能力があるかどうかが第一条件となります。相手が借金まみれで、養育費を支払う余力がない場合は基本的には差し押さえ不可能となっています。離婚後も相手に安定した収入はあるか・もしくは十分な預貯金はあるかどうか、きちんと確認しておきましょう。
次に、相手の情報を把握しているかどうかも条件となってきます。
* 現住所
* 勤務先情報
* 口座番号、銀行支店名
特に、現住所が分かっていない場合は強制執行に踏み切れなくなってしまうので必ず把握しておきましょう。
また、相手の給料から差し押さえをしたい場合は相手の勤務先情報(会社名・所属部署・会社住所)・預金を差し押さえる場合は、銀行名・支店名・口座番号も控えておくようにしましょう。
そして、上記2点の他に債務名義を取得しているかどうかも重要になってきます。
債務名義とは、「強制執行の請求権や範囲・債権者・債務者を表した公正証書」のことを指します。これがないと、強制執行を行うことはできないので注意です。
債務名義は、訴訟・相手との話し合いで取得することができます。
それでは、いよいよ養育費差し押さえの手続方法について解説していきます。
差し押さえをする場合は、まず必要書類を集めるところから始めましょう。
* 当事者目録
* 資格証明書
* 請求債権目録
* 差し押さえ債券目録
* 債務名義
* 送達証明書
これらの書類は、申立をするときに提出しなければならないので必ず用意しておきましょう。
※必要書類は、裁判所の公式HPからも取得可能です。
参照元:裁判所 債務執行に関する申立ての書式一覧
必要書類が用意できたら、裁判所にまとめて提出をして申立てを行います。提出場所は、相手の住所を管轄する家庭裁判所なので、間違えないようにしましょう。提出方法は、窓口に直接出すかもしくは郵送でも可能です。
書類を提出し特に不備がない場合は、相手方と(相手の給料を差し押さえする場合は)相手方の勤務先に差押命令が下されます。
あとは、相手方と話し合いをして「いつまでに養育費を振り込んでほしい」など詳細を決めて差し押さえを行います。
この時注意してほしいのが、「相手の給料を全額差し押さえできるわけではない」ということです。目安としては給料の2分の1までほどしか、取り立てることはできません。
全部養育費として持っていけるわけではないことを頭に入れておきましょう。
無事、話し合いが終了した場合は、裁判所に取立完了届を提出するのを忘れないようにしましょう。
こちらの書類も、裁判所の公式HPからダウンロード可能です。
参照元:裁判所公式HP「債券換価・取下係」より
今回は、養育費の差し押さえについて解説していきました。養育費を強制的に差し押さえしたい場合は、「強制執行可能なケースに当てはまっているか」「条件に当てはまっているか」を確認する必要があります。
また、基本的に強制執行は自分でやるものなので、書類の提出や相手方の情報の確認などはしっかり行いましょう。一人で行うのが難しい場合は、弁護士に依頼することも可能です。
養育費の差し押さえを検討している方は、ぜひ今回の記事を参考にしていただければと思います。
20代フリーライター。多くの女性が求める情報を分かりやすく、そしてコンパクトにまとめていきます。最近は資格勉強にハマってます。