好きを仕事に!なりたい私を実現する

ノラ猫あがりのスターたち

突然ですが、皆さまは「犬派」ですか? 「猫派」ですか?ちなみに私は「犬猫派」です。たしか数年前までは「犬ブーム」と言われていたのですが、昨今は「猫ブーム」にシフトしつつあるのが私の個人的な感想です。犬であれ、猫であれ、コンパニオンアニマルと呼ばれる彼らと私たち人間の間には長い友情の歴史と深い絆が否めません。たとえご自身が飼っていなくても、ご親戚、ご友人、あるいは職場に犬猫と暮らしている方は必ずいるでしょう。そういう意味では、犬も猫も何かしらの形で私たちの生活圏にいる身近な生き物です。

私は二十五歳ではじめて犬を家族に迎えました。

幼少期は引っ越しつづきの生活スタイルや親の反対もあり、飼いたくても飼えなかったのです。ずいぶん遅い「犬デビュー」を果たした私は、無我夢中で犬育てに没頭。のちに猫にも手を出し(笑)、ああ世の中にはこんな愛らしい生き物たちが存在していたのかと、感嘆の日々を送っていたのです。

いい飼い主になりたかった私は遅咲きをカバーするために、犬猫に関する本を読み漁りました。当時はインターネットがほとんど普及しておらず、犬猫たちのトレーニングや食事に関する情報は書籍で得るのがスタンダードでした。私の人生が劇的に変化したのはそんなときです。

自分と愛犬の生活を豊かにしてくれる本たちの中に、たった一冊、強烈な異物が混ざりこんでいました。渡辺眞子著「捨て犬を救う街」。内容をひと言で言い表すなら、日本の犬猫たちを取り巻く社会の歪と不平等さ。約二十年前の犬猫の殺処分数は年間六十五万頭(近年は四万頭にまで減少)にものぼっており、不要の烙印を押された犬猫たちが次々と「ガス室」の中で非業の死を遂げていることを知ったのです。特に猫の処分数はひどく、私たちの血税でどんどん犬猫の命を奪われている現実を前に、私は読んだことを激しく後悔。ほとんど眠れず、食事も喉を通らず、悶々と過ごしていたのです。

「どうしたら社会を変えられるのだろう」

「どうしたら社会を変えられるのだろう」と。それまで自分のことしか頭になかった若き日の私にとって、あまりにも重く苦しいテーマが頭上にのしかかり、狼狽しました。社会を総入れ替えする位の絶大なパワーがほしい……。しかし、私ひとりの力はたかが知れています。「したいこととできること」の狭間で押しつぶされそうになりながら、私はやがて三つの答えを見つけたのです。

一つ目は「思考から行動に移すこと」
二つ目は「ゼロより一の精神で取り組むこと」
三つ目は「犠牲的精神を持たず、自分を許すこと」

これは犬猫の問題のみならず、人生のさまざまなシーンで応用可能の考え方だと自負しています。年間六十五万頭もの命が奪われている現実に抗うために、私は一頭一頭、生き場のない犬猫たちを保護譲渡しつづけました。周りに「大河の一滴」だと笑われても、私は自分のスタンスを変えませんでした。変えなかったというより、微力な私にはほかの選択肢などなかったのです。

数をこなせないかわりに、縁あってやってきた保護犬猫たちを我が家でピカピカのスターに磨く術を、私は自己流で習得。適切な医療にかけ、たいせつに育て、「映え」する写真を撮り、ブログやSNSに個体の情報を流す。自分で言うのもおこがましいのですが、私には意外とプロデュースする才能があったようで、これまでに合計三百五十頭以上のスター犬猫たちが、私の手元を離れ、あたたかい終の棲家へと巣立っています。同時に、自分と同じ志を持つ方々へのアドバイスも欠かさずにしてきました。

壮大な森をしっかり仰ぐには、まず一本の木を見なければならないし、マクロを理解するためにはミクロを掘り下げなければなりません。よって私のやり方は間違っていないと思っています。犬猫たちの問題を解決していく中でストレスが溜まることも多いですが、その何倍もの幸せを享受しているのも事実です。

捨てる神あれば拾う神ありとはよく言ったもので、私は同じ志を持つ方や、私の保護動物を珠のように慈しんでくださる「里親さん」に囲まれ円満に活動しています。もちろん、苦労がなかったとは言いません。けれど「ムダな苦労」はひとつもありませんでした。近年、首都圏を中心に国民の意識が高まり、不遇な犬猫たちは減少傾向にあります。僭越ながら私の地道な草の根活動もその一助となったと考えています。

ノラ猫のスカウト

ここ数年、私が特に力を入れているのは「ノラ猫のスカウト」。飼い主のいないホームレスの猫は、たとえ殺処分の対象にならなくとも、外で生きづらい思いをしています。交通事故に遭い、命を落とす猫も少なくはないでしょう。猫が好きな方にとっては心が痛く、猫が苦手な方にとってもノラ猫の存在は頭痛の種になっています。

だからこそ私は躊躇なくノラ猫を自宅へ招き入れ、人に馴らし、抱きしめ、運命の赤い糸を探し、出会い、そして笑顔で見送っています。私の活動には派手なパフォーマンスがありませんが、私は自分の人生に誇りを持ち、常に心が満たされています。「助けてあげている」という犠牲的精神が私にはないので、いつでもエンジョイしています。

うちの子です。私が近所から連れて帰りました。私の家族で名を 「さぶ」といいます。
元ノラ猫で保護したときはノミがすごくて驚きました。

汚れた世界を嘆くなら、まずホウキを握って自分の家の周りを掃き、余裕があれば、一歩先まで掃き、そしてまた一歩先へとホウキを進める。疲れたら休んで、休んだらまたホウキを握って掃けばいいのです。そうすればいずれ、世界は清潔で美しく、私たちは住みやすくなるでしょう。私と出会ってくれた逸材のノラ猫たちとの濃厚なエピソードを(一年かけて!)一冊の本にまとめました。「ノラ猫あがりのスターたち(さんこう社)」。

私の十七年半に及ぶ微々たる保護譲渡活動に興味関心を持ってくださった方にお手に取っていただければ幸いです。長く拙い文章を読んでくださりありがとうございました。皆さまに素敵なことが起きますように。

田辺アンニイ
ブログ「幸せの703号室」

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